フジファブリックが好きだということを今まで隠してきた。
世間が「よくある草食系バンドのひとつ」としか見なしていない気がしていたから
「フジファブリックが好きだ」と言うと流行りものに乗るちゃちな女だと思われてしまう気がしたから
フジファブリックが好きだ。いま胸を張って言おう。
ごめんなさい、やっぱり好きと言えるほどよく知らなかったわ。「夜明けのBEAT」ともう一曲しか知らないわ。
もう一曲は昨日の夜はじめてきいた。ラジオから流れてきたのだ。いつも聴いてるその番組は古い曲をかけることが多いから、DJが「フジファブリックの…」と曲紹介する声に思わず「えっ?」と聞き返した。
若者のすべて
「真夏のピークが去った 天気予報士がテレビで言ってた」
「まさに今」という感じの歌詞にまず引き込まれた。そのあとのメロディラインがすごかった。
「メロディライン」って初めて使ったハズカシイ
それから今まで何十回もリピートしている。こんな曲をつくれる人間がいるんだなあと思う。尊い。
8月27日はゴキブリに襲われる夢で起きた。その次の日は大学時代のサークルの男に殺される夢。本が売れるかどうかということが自分の一身にかかっているというプレッシャーを感じていた。死ぬほど宣伝をしないといけない、だが宣伝ばかりしていると読者に嫌われるというジレンマに苛まれていた。
ストレス解消のために甘い物を買おうとスーパーに入った。何となく父親に電話をかけた。このところ毎日父親に電話をかけている。電話をかけて相談できるほど親しい人が父の他にいない。前はいたけど去ってしまった。
「本を売るのは出版社の責任だからお前はのんびりしてていいんだよ」
「わたしが本気を出して宣伝しないと本なんか売れないよね…」と暗い声を出す娘に父はそんなことを言った。
わたしはいつも物事が成功するもしないも全部自分の手にかかっていると思いこんでいる節がある。自分の力を過信しているんだろうな。
「売れる本はほっといてても売れるんだよ」
うんうん、自分以外の要素を頼ったりしてもいいよね、運とか編集者さんとか本屋さんとか何か大きな力とか……
って父の言葉を反芻しながら「若者のすべて」を繰り返し聴いていたらキリキリ痛んでいたお腹もだんだん癒えてきた。
吐き気も治まってきたし、死にたい気持ちもなくなってきた。やっぱり最後に頼れるのは家族だ。そんな家族に未だにどんな本を書いたか言えていないのは何だか申し訳ない。言うつもりはないし言えないけど。
「結局、お前が何を書いてるか知らないままここまで来たな…」
って寂しそうに言われた。ごめんね。
ハズカシイ娘でごめんね。ぜんぶ若気の至りだよ。
そういやわたしはあと何年若者でいられるんだろう…
若く見られるのは嬉しいけど、若く見えるだけの大人にはなりたくない。
「あのぅ、やっぱりさみしいんで、戻ってきてください」
ケンカして離れていった人にそんな単純な言葉さえも言えないでいるうちは、多分ずっと大人にはなれないのだろう
いや、大人になればなるほど
言えなくなるのかもしれないな・・・